1) ナレッジマネジメント概要

 第1回は、形式知の情報共有、また、人脈連携の手段であるナレッジマネジメントについて紹介します。
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 ナレッジマネジメントは、1990年代後半から米国で体系化された経営理論の一つであり、個人が保有する知識資産を、いかに組織として有効に活用するか、その知識管理手法が組織競争力の源泉であると期待された事に始まります。
 ナレッジマネジメントは当初、「成果物(文書)」を知識資産と位置付け、これを組織で共有化し、活用するための情報共有から出発しました。

価値創造概念
図1.1. 価値創造概念

 しかし、成果物は本来、「ひと」の頭の中に格納される膨大な情報の中のほんの一部のサンプルに過ぎず、情報資産として本来求められるべきは、普遍性のあるメタナレッジであると指摘される様になりました。
 技術革新が著しい昨今、共有資産化された知識・技術の陳腐化問題を解決する汎化知識をメタナレッジと呼び、これを有する「知的プロフェッショナル」と定義される人材を組織の情報資産と捉える、「know who」が重要視されることになりました。

 そしてナレッジマネジメントとは、「成果物(文書)」と「知的プロフェッショナル」との複合連携により、「新たな次元の価値創造を実現する経営手法」であると位置付けられる様になりました。これが、「創発※1(emergence)」です。

 これらの経緯を経て、ナレッジマネジメントは、図1.1.に示すような組織レベルでのスパイラル状の知識資産の拡充として説明され、これをITサポートにより実用化されています。

習得知識の可視化
図1.2. 習得知識の可視化

 ここでは、逐次蓄積されていくナレッジを有効活用し、優れた価値を創造し、そして創発していくためには、蓄積された膨大なナレッジの中から必要なナレッジをいかに適切に引き出す事ができるかが重要なポイントとなります。つまり、これらの蓄積ナレッジを瞬時に理解し、活用していく手段が求められます。

 特に、多次元的に分布し、かつ、複雑に入り組んだ膨大な蓄積ナレッジ群の分布状況を瞬時に理解し、適切なナレッジへと誘導するための手段として、可視化が重要です。そこで、分析情報として算出される膨大な数値情報群に対し、これらを視覚的に捉える事のできる可視化手段を用いる事とし、これを「ナレッジマップ」と定義します。

 例えば、ある領域の地形形状が数値化された高さ情報を単にデータ群として提供されても、その地形の表面形状を理解する事はできません。等高線表現、或いは、3次元表現等の手段を用いる事で、はじめて理解できるようになります。この観点から、数値化された知識情報を可視化情報に変換するユーザ・インタフェースを提供します。

 一方、図1.2.に示すように、人は様々な環境から新しい知識を獲得し、また人脈を広げています。これらの知識・経験の獲得過程を頭脳のニューロン・レベルで観測したとき、その蓄積状況は、ニューロンの発火度として表現する事ができます。

 このシステムでは、この発火度に対応する情報を、ナレッジに関する数値情報として上述の可視化手段で表現します。

次回は、膨大な蓄積ナレッジを有効活用するための多次元/ツリー階層化構造についてです。

※1 局所的な相互作用を持ち、もしくは自律的な要素が多数集まる中から、その総和とは質的に異なる高度で複雑な秩序や概念が生じる現象のこと。所与の条件からの予測や意図の範疇を超えた構造変化や創造が誘発されるという意味で「創発」と日本語訳される。

◆参考文献
  • 犬塚,”知識のフローとストック”,信学技報,Vol.103, No.182,p.11-16, July, 2003.
  • 溝口,”学習の知的支援”, 人工知能AI, Vol.16, p-29-34, Nov., 2001.
  • Desouza K. C.,”Facilitating Tacit Knowledge Excange”, Commu ACM, Vol.46, No.6, p.85-88, June 2003.
  • 大崎,”日本におけるITを活用した経営戦略に関する研究”, 長崎総科大紀要, Vol.43, No.2 p-333-338, March, 2003.
  • 大崎,”ナレッジマネジメントにおける構造化知識構成法”, 経工誌, Vol.53, No.6, p437-447, Feb.,2003.
  • 日本総研,”情報可視化によるドキュメント構造化の調査研究”, 情報可視化によるドキュメント構造化の調査研究平成12年度, p.96, 2001.
  • 段木,”誤差逆伝播法による数値計算機能獲得に関する検討”,IEICE,NC92-67,p53-60,dec.,1992.
  • 甘利,”ニューラルネットワーク研究の過去・現在・未来”,人工知能学会,vol.4,No2,p89-96,1989.
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